present from you

「ええと、うん そうだ いくつかの物語を プレゼントしてあげる ちゃんと読んでおくこと いいね」

 

僕がバンプと出会ったのは高校2年生の時だった。いや、天体観測とか虹を待つ人とかは知っていたんだけど、ちゃんと聴き始めたのは高2の時だったんだ。1年の時にもバンプ好きな友達がいたけど、2年の時の彼は1年の時の彼よりも熱心な布教者だった。頼んでもいないのにベストアルバムを貸しつけてくれた。最初はあまり気乗りしなかったけど、聴いていくうちにいい曲が多いな、って思うようになって、ユグドラシルとか、orbital periodとかのアルバムも、今度は能動的に借りるようになった。僕は周りの人の好みに非常に影響を受けやすいから、高2の時はバンプとback numberばっかり聴いていた気がする。彼は本当に変わった人で、スピードワゴンの小沢みたいなことをいつも言ってるような人だった。悪く言えばカッコつけで、もっと悪く言えばちょっと気持ち悪い、そんな人だった。そういえば高3のときにソラニンを一緒に見たうちの一人だった。というより彼の家で見たんだっけ。高校を卒業してからは一度も会っていないが、LINEのホーム画に男3人でディズニーに行っている楽しそうな姿が映っていて生存確認できた。会いたいけれど、そんなことをこちらから言い出すのは癪だな。いつか同窓会とかで会えたら楽しいかもしれない。

つい先日、バンプがサブスク配信された。アップルミュージックの狂信者である僕も当然聴いた。アルバムはパソコンにほとんど取り込んだはずだったが、消えてしまったものがいくつかあったからだ。僕と同様に、友達もみんなバンプを聴いているようで、インスタのストーリーにはアルバムのジャケット写真が頻繁に流れてくるようになった。バンプは高2の時と比べるとめっきり聴かなくなってしまったけど、久しぶりに聴くとやっぱいいな、と思った。あの時そこまで好きでもなかった曲に今になってハマってしまうのも面白い。

久しぶりに聴いてやっぱり思うけど、バンプの歌詞は優しい。人生の辛さとか、人間の醜さとか、そういうものを知っているからこそ出る包容力。そんなものが曲から感じられる。子どもっぽいって揶揄する人もいるかも知れない。でも彼らの作る絵本みたいな世界が実現したらどんなに素晴らしいだろう。僕も捻くれてるししょっちゅう世界に悪態をついてしまうけど、そんな理想郷をどこかで探している。逆に言えば、理想郷を求めるのをやめてしまったら本当に終わりだと思う。実現しないから諦めるんじゃなくて、実現しなくてもそれに向かって一歩でも二歩でもいいから進む、それが大切なんじゃないかな、と思う。もちろん後ずさりしてしまうこともたくさんあるから、理想にはまだまだ果てしなく遠いけど。バンプみたいに良いところも悪いところも、傷や痛みも全部ひっくるめて「腕の中へおいで」って言えるような人になりたいな。

同じようにサブスクでバンプの曲を聴いている友達と話をしていたら、高2の時の彼のことを思い出してしまった。もちろん彼だけじゃなくて、今までたくさん出会ってきたバンプ好きの人たちのことを思い出させてくれた。音楽に思い出がくっついてて、音楽を聴くたびに大切な人とか言葉とか景色を思い出せるのって良いよね。言い換えれば、音楽が作ってくれる物語なんだ。

彼みたいにちょっとキザなことを言ってしまったな。でも、言うまでもなく、僕も気持ち悪い側の人間なんだ。